美人画研究会

「美人画研究会」は、女性美をモチーフに描かれた絵画、版画、イラスト、写真などを対象とした研究発表を行なっているサークルです。その内容は美術の研究のみにとどまらず、顔の研究、歴史的背景の研究、心理学的な切り口での研究など、多岐のジャンルを横に繋ぐものとなっています。 
→こちらに「美人画研究会」のホームページがございます。


美術館巡り

2018年3月11日(日)に美術館巡りをしてきました!

1) 世田谷美術館「パリジェンヌ展」

2) 静嘉堂文庫美術館「歌川国貞展」

 

 パリジェンヌ展は、18世紀から20世紀のパリという舞台で生きた女性達に様々な切り口からスポットライトを当てた、絵画・衣装・イラストレーション・写真などの展覧会でした。

 18世紀初頭は、ルイ14世の支配するヴェルサイユを中心とする宮廷文化が終焉し、女性も活躍できる新しい時代の幕開けでもありました。舞台でもそんな女性たちが活躍し、頭上高く結上げた装飾的なポンパドールヘアーと、パニエで大きく膨らませた華麗なドレスがトレンドのファッションだったことを、当時のドレスや版画(エッチングに彩色)の展示作品が物語っていました。また、下火になっていたサロン文化が形を変えて再開し、社交・お遊びの場から知的な女主人によってもてなされる文化的空間となったようで、銀製のティーポットに有田焼の陶磁器などでお茶を飲む文化が始まったのです。(※箱入りのティーセットが展示されていました)

 19世紀、家庭での女性の役割がよき母親であることに限定されていた時代に、自立する意欲を持った女性たちはシャリバリの風刺画で揶揄されました。子供に本を読む母親、刺繍をする女性、といった母性礼賛の絵画が並んで展示された後に、何かを作っていて子育てがおろそかになっている女性やキュロットをはく女性などが批判を込めて描かれたリトグラフが展示されていて、とても面白かったです。

 そんな時代の中、おしゃれなパリの女性たちのファッションは世界中から注目され、憧れのパリジェンヌが確立されていきました。ハイファッションに身を包んだ貴族女性の絵画は、高級なシルクサテン地で大きく膨らませた袖やスカート部分と対照的に、細いウエストが強調されています。これはコルセットの流行を表していて、ドーミエの版画がそれを風刺していていました。これらの作品に加え、当時のハイファッションの手袋、サテンシューズ、ショールなども展示されていました。そして、お目当ての「インチズ夫人」(ジョン・シンガー・サージェント)の登場です。インチズ夫人はボストン社交界の美女で、パリジェンヌに憧れてこの絵を描かせたのですが、サージェントが片方の肩紐がずり落ちているように描いたために悪評が立ち、後に現在のように描きなおしたけれど、婦人は受け取らなかったということです。

 当時のアメリカはまだ保守的でしたが、ハーパーズ・バザーなどのファッション雑誌からパリジェンヌのファッションを真似ていたようです。髪型でも三つ編みのおさげスタイルを真似したり、後ろを膨らませたバッスルスタイルのドレスなどが「マルグリット」(モリス・ハント)やファッション誌のイラストなどに描かれていました。また、ウォルトによるバッスルスタイルのドレスが展示されていて、18世紀のファッションからの変遷を見ることができました。これがオートクチュールの誕生となったようで、ボストンの上流階級の女性たちもウォルトのドレスを取り寄せたそうです。(※保守的なボストンの女性は、すぐには着用せず、1~2年タンスの肥やしにしていたとか・・・?)

 19世紀後半には、女性たちが芸術の分野で活躍できる機会も増え、画家、モデル、彫刻家としての姿が描かれていました。注目すべきは、女優のサラ・ベルナールが彫刻家でもあったことです。ブロンズ製の女性頭部の彫刻「ルイズ・アベマの肖像」が彼女の作品であることを知り驚きました。さらに、ロートレックやマネ、ピカソのミューズとなった女性達が描かれ、当時のファッションが華美なものからシックな雰囲気に変わってきていることも見て取れました。

 20世紀に入ると、ファッションもめまぐるしく変わり、写真、ポストカードのイラスト、劇場のポスターなどでその変遷を見ることができます。展示も絵画より写真が中心となり、様々なファッションに身を包んだジョセフィン・ベイカーの写真や、ファッションモデルやブリジットバルドーの写真などがありました。お気に入りはゲアダ・ヴィーナによる可愛いイラストで、ベルエポックの頃のパリが描かれていました。また、ジャン・パトゥのアールデコ調ドレス、バレンシアガの構築的なフィット&フレアのドレス、カルダンのエナメル使いのミニワンピースが3体順に並び、パリのファッションが目まぐるしく次々に生み出されていった20世紀という時代を再確認できました。

 

 美人画研究会でありながら、18世紀から20世紀前半のファッションの歴史を中心に描いてしまいました!

 

 さて、次は静嘉堂美術館の国貞展です。静嘉堂美術館は岩崎彌之助・小彌太の父子2代によって設立された静嘉堂創設百周年の記念事業として平成4年(1992年)にオープンした美術館で、今回はその多くの収蔵品の中から国貞の錦絵を取り上げた展覧会でした。
 歌川国貞は江戸時代後期に活躍した浮世絵師で、美人画や役者絵の名手として知られています。今回の展覧会では美人画の中でも特に日常の生活を描いた作品が中心に展示されていました。井戸端で家事をする女性たち、お化粧や身づくろいをする女性たち。中でも急な夕立と雷に慌てて雨戸を閉め、蚊帳に逃げ込む様子の女性たちが生き生きと描かれた錦絵は、動きがありユーモラスでとても楽しい作品でした。 

     江戸後期は浮世絵の技術が最高峰に達した時代といわれるだけあって、錦絵の美しい色合いや、着物の柄や髪の毛を丁寧に彫り上げた技術、そして摺りの精巧さに感心いたしました。


第1回美人画研究会作品展

日時:2018年2月3日(土)AM9:00~PM9:00、2月4日(日)AM9:00~PM5:30

会場:東京都江東区森下文化センター 1回展示ロビー

 

美人画研究会の有志約10名による2日間限りのミニ作品展を初めて開催いたしました。私が出展した作品はこちらの4枚です。

 

※詳細はこちらからご覧ください。

 

順に

「プリマヴェーラ」(春の女神)

「サマー・ウインド」(夏風に吹かれて)

「ほろ酔い・平成Ver.」

「プロセルピナはるか」